この空の彼方
「芦多、お前に魔物討伐を命ずる。」



1人、壁際に詰めていた男が身動きした。



芦多は、呆然と辰太郎を見返した。



「は…?」



思わず、声が出る。



「八重は疲労の色が濃いのでな。
お前がかわりに地方へ出向け。
お前は他の男衆よりも秀でていると聞いている。
この間の武術大会でも見事な成績を収めた。」



私が、討伐?



生身で?



術者の手伝いではなく?



ふと、辰之助が笑っているのに気付いた。



目が合う。



「術者の同行は無しですか?」


「灯世は行かん。」



辰太郎が答えようと口を開いたが、辰之助がそれを遮った。



「何故ですか?
彼女はもう大分力がついて、八重殿の代わりも出来ると聞いて…。」


「私と婚約する。」



芦多は血の気がサーッと引いていくのを感じた。



灯世と婚約?



「灯世は16。
もう、17になる。
そろそろ私も年頃だ。」



得意げに、辰之助は言う。



その目は、明らかに、



勝ち誇っていた。



…何に?





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