この空の彼方
「ということだ。
行ってくれるな?」


「………はい。」



断る選択肢など、最初から用意されていない。



そもそも、私は戦う為の駒として生かされてきた。



…しかし、辰之助様の型になるのは十中八九自分だと思っていたが、誰がなるんだろう。



千歳か、爪鷹か。



耶粗は少し、顔が違う。



型の中で組み分けされた中の最上組の中で、辰之助の身代わりは選ばれる。



どうか、選ばれるのがあの3人ではないよう。



芦多は謁見の間を辞退しながら祈った。



型なんぞになって、得することなど何もない。



刃物で刺されって死ぬのがオチだ。



…自分はどうやらその死に方よりも悪い方に進んだらしい。



ああ、畳の上で死にたい。



型の住処へと続く長い回廊を歩きながら、芦多は願った。



それよりも、灯世。



灯世、お前は、もう知っているのか?



了解したのか?



まぁ、断れるわけがないか。



雪が、降ってきた。



中庭で灯世と雪遊びをしたことを思い出す。



ああ、まだ死ぬわけではないのに、走馬灯のように…。








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