この空の彼方
「芦多!」



背後から、千歳の叫び声が聞こえた。



「どうした?」



振り返ると、血相を変えて、千歳が芦多の胸倉を掴む。



「お前、討伐に駆りだされるぞ!」


「…あぁ。
さっき、仰せつかった。」


「…くそ!」



突き放すように芦多を放し、千歳は柱に拳をめり込ませた。



「あいつら、汚すぎる!」


「国を護るためだろう?」



ぎろりと、千歳は芦多を睨んだ。



「お前、本当にそう思っているのか?」


「ああ。」



嘘だ。



薄々、感づいている。



「嘘吐き。
嘘吐き、嘘吐き、嘘吐き嘘吐き!」



千歳が再び飛び掛ってくる。



芦多は千歳の肩を掴んだ。



それでも、千歳は力で押してくる。



「馬鹿!
お前は!
術者抜きで最前線に送り込まれるんだぞ!?
わかってるのか!?」


「ああ。」


「死ねって、死ねって言われてるのと同じなんだぞ!?」


「…ああ。」




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