この空の彼方
「来るな!」


「…芦多、俺達が今、どんな気持ちでここに立ってると思う?」



千歳の哀しげな目に気圧されて、芦多は押し黙った。



「正直、もう会えないかもしれないと思ってる。
そうは願っていないがな。」


「芦多、お前が俺達に来て欲しくない理由はなんだ?
危険だからだろう?
俺達だってお前をそんな危険に1人さらしたくないんだよ。」


「芦多ぁ、俺、問題起こさないようにするからさぁ。
待ってろよ。」



またもや泣き出しそうな千歳から、視線を外す。



爪鷹が千歳の肩に手を置いた。



「政隆だって、本当はお前と一緒に行きたくて死にそうなんだ。
心配で心配で、倒れそうなんだ。
あんまり自虐的な行動を自らとろうとするなよ。」


「…わかった。」



耶粗とがっしり抱き合う。



力強い腕に抱かれて、芦多は目頭が熱くなった。



「じゃー、頑張ってね。」



いつもの柔らかい口調の爪鷹に抱かれ、知らず知らずのうちに涙が一粒こぼれた。



千歳は、爪鷹と芦多が離れるのを待ちきれず、突っ込むようにして芦多に腕を回した。



「芦多…!」


「泣くな馬鹿。
まだ私は死ぬと決まったわけじゃないんだ。」



そうだ。



こんな、涙の別れを交わしても、1年以内に帰ってこれるかもしれないんだ。



「明るい面をみよう。
私は、力を認められた。
だから、討伐に行くんだ。
な?」


「うん、うん。」




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