この空の彼方
こんな萎れた姿を見せるなんて、不覚だ。



芦多は瞬く間に理性を取り戻した。



「じゃあ、行って来る。」


「ああ。
向こうの討伐隊と仲良くな。」



芦多は笑って答え、馬に跨った。



「じゃあな、政隆。」



最後に一声叫ぶと、芦多は政隆の返事を待たず、馬を走らせた。



冬の朝の凍るような空気が頬を打つ。



と、木の陰に、人影が見えた。



大分通り過ぎてから、馬をとめる。



まさかと思いながらの振り向くと、灯世が立っていた。



「灯世…。」



久し振りにみる灯世は、どこか少し大人の女に見えた。



「…寒い中、何を…。」


「わかるでしょう?」



少し怒ったように、灯世は大股で芦多に近づいた。



芦多は無意識に馬から降りる。



「こんな、寒い時期に、1人で駆りだされるなんて…。
いくら向こうで討伐隊が待っているといっても、危険すぎる。」



灯世の声は湿り気を帯びていた。



「私も志願したのに、許可が下りなかった。」


「…灯世には、もっと大事な役目が…。」


「辰之助様のおもちゃになることですか!?」



静かに、灯世は声を荒げた。



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