この空の彼方
「あの人の魂胆はわかっています。
本当にゴメンなさい、私のせいで…。」


「違う、私がもう少し、自分を抑えていたら…。」


「そんなの…。」


「辰之助様が私のことをよく思っていないのは知っていたんだ。
だけど、灯世と会うことを控えなかった。」



灯世が真っ白な息を吐く。



鼻も、頬も、指先も、真っ赤だった。



「こんな寒いところにいてはいけない、体を壊す。」


「そうですね、辰之助様に献上された体ですもんね。」



灯世はキッと芦多を睨んだ。



「どうして、そういう無神経なことが言えるんですか?」


「いや、そういう意味で言ったんじゃ…。」



千歳達に言われた言葉がよみがえる。



“相思相愛”



灯世のこの態度で、確信を持てた。



「私は、芦多様…。」


「みなまで聞かない。」



芦多は灯世の言葉を遮って、引き寄せた。



腕の中で、灯世が硬くなるのを感じた。



…そんなの知った事か。



「帰ってきたら、私が、言う。」



何を、というのは、灯世もわかってくれたらしい。











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