この空の彼方
◆参
奥方
ウグイスの鳴き声がする。
灯世はゆっくりと目を開けた。
閉ざされた障子の隙間から、日差しが差している。
なるべく静かに起き上がり、部屋を出た。
そのまま足早に中庭に向かう。
早朝なのが幸いして、誰とも行き合わなかった。
縁側の燦に腰かけ、灯世は腰をさすった。
寝違えたのか、痛い。
辰之助と床を共にするようになってから、しょっちゅうだ。
「もう、四月半、か。」
芦多が行ってしまってから、もう5カ月になろうとしていた。
確か、年越し前だったから、それくらいになる。
…そして、年が明けると共に、灯世は辰之助に娶られた。
屋敷に残してきた丈は、とても喜んでいた。
八重も、灯世の気持ちを知らないで、よかったわねと言った。
ただ、千歳達と政隆は、何も言わず、そっと頭を撫でてくれた。
…それだけで、十分だった。
今だ、婚礼の儀のことはしっかりと覚えている。
皆、参列者は笑みをたたえて「おめでとうございます」と口を揃えた。
中には、灯世を睨みつけている者もいたが。
…里は言うまでもなく、その一人だ。