この空の彼方
毒
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灯世は昼下がり、辰清を連れて庭を散歩していた。
道々、辰清は目の前を横切っていく蝶や蜂を追い掛ける。
灯世はこけるのではないかと心配だったが、だいぶ足元がしっかりしてきた辰清は一度も転ばなかった。
「母様、またお散歩行きましょうね。」
帰ってきて、部屋に上がった途端に辰清は次の約束をおねだりする。
灯世は苦笑いで頷いた。
「いい子にしていたらね。」
いつもいい子だと言いたげに、辰清は頬を膨らませた。
確かに粗相をしない、行儀のいい子だ。
「ちょっと母様は手を洗ってきます。
辰清、お茶を飲んでおいてね。」
「はーい。」
散歩で喉が渇いている為か、辰清は素直にお茶を口に運んだ。
それを見届けると、灯世は部屋を出た。
暑い…。
元気盛りの辰清は平気な顔をしているが、重い着物を着た灯世にはきつい。
薄い着物一枚でいられたらどんなに楽だろうか。
肩書きがついてまわると、面倒なことが多くて困る。
あぁ、ただの娘に戻りたい。
そういえば、と灯世は足を止めた。