この空の彼方
「灯世殿はお前に一番傍にいて欲しいはずだ。」
「わかった。
後先考えなくていいんだな。」
芦多は半ばやけくそで灯世のもとへ向かう。
すれ違い際、千歳がにやりと笑うのが見えた。
足音を殺して千歳に教わった部屋に向かう。
侍女と鉢合わせそうになると、息を潜めて隠れた。
芦多は神経を張り詰めた。
部屋に着くと、中からはすすり泣き声が聞こえてきた。
しかし、それは灯世の声ではない。
芦多はそっと中を覗いた。
中では、灯世を抱くようにして八重が泣いている。
隣には、いのが泣き崩れている。
辰之助も、灯世の向かいで拳を握り締めていた。
だが、灯世は魂を抜かれたかのように無表情だ。
どれだけ、悲しいだろう。
芦多には推し量れない。
芦多は、布団に寝かされている辰清をみた。
幼い、笑顔の辰清が記憶によみがえる。
無邪気なあの子は、もういない。
…私の出る幕ではなさそうだ。
芦多は再び足音を殺して立ち去った。
「わかった。
後先考えなくていいんだな。」
芦多は半ばやけくそで灯世のもとへ向かう。
すれ違い際、千歳がにやりと笑うのが見えた。
足音を殺して千歳に教わった部屋に向かう。
侍女と鉢合わせそうになると、息を潜めて隠れた。
芦多は神経を張り詰めた。
部屋に着くと、中からはすすり泣き声が聞こえてきた。
しかし、それは灯世の声ではない。
芦多はそっと中を覗いた。
中では、灯世を抱くようにして八重が泣いている。
隣には、いのが泣き崩れている。
辰之助も、灯世の向かいで拳を握り締めていた。
だが、灯世は魂を抜かれたかのように無表情だ。
どれだけ、悲しいだろう。
芦多には推し量れない。
芦多は、布団に寝かされている辰清をみた。
幼い、笑顔の辰清が記憶によみがえる。
無邪気なあの子は、もういない。
…私の出る幕ではなさそうだ。
芦多は再び足音を殺して立ち去った。