この空の彼方
準備
***
朝、稽古をしていると、辰太郎から使いがきた。
政隆が眉間にしわを寄せる。
「なんなんだ。」
芦多はそれを横目に見ながら、回廊を見上げた。
「敵軍、国境に到着。」
ざわざわとざわめいたが、もう人伝いに敵国が攻めてきているのはみんな知っていたので、わざわざ使いもその説明はしなかった。
「これから軍会議で隊編成を決める。
正午に各班長は大広間に集合されたし。」
使いはそれだけ言うと、踵を返して歩き去った。
顔をしかめて。
それに気付いた芦多は少し嫌な気分になった。
型とこれ以上同じ空気を吸いたくないという顔だな。
はぁ、とため息をつく。
型の人間が嫌われているのは知っているが、こうも露骨な反応をされるのはいい気分ではない。
「おい、芦多。」
「とうとうだな。」
千歳と耶粗が芦多の背後に立った。
「ああ。」
しばらくして、使いが歩き去った方向から視線を剥がし、芦多は言った。
「班長、やると面倒だな。」
ぼりぼりと耶粗が頭を掻く。