この空の彼方
屋敷に帰った灯世を、辰之助が泣きながら抱きしめた。
灯世はその腕の中で身を竦ませる。
芦多は飛び出したい衝動を必死に堪えた。
灯世の後ろから、他の人間が彼女を取り囲んでいくのを眺める。
たちまち、灯世は人混みに紛れた。
「お疲れ、芦多。」
遠巻きにそれを眺める芦多の後ろから、千歳が肩に手を置いた。
「ああ。
お前達にも世話をかけたな。」
「いいって。
俺達も灯世が無事でどれだけ安心したことか。」
爪鷹が言うと、耶粗も頷く。
「でな、着いて早々だが明日出陣だとよ。」
「もうか。
そうだな、その話が出ていたな。」
このまま灯世が見つからなかったら、房姫はどうしていたんだろう。
国にとっての一大事だったのに。
「まったく、灯世も災難だよな。
疲れて帰ってきたと思ったら戦地へ、なんて。」
耶粗はやれやれとため息をつく。
芦多も同意見だ。
ぼろぼろなのに。
「まあ、今晩は八重様が休めるように取り計らってくださるよ。」
爪鷹の言葉を信じるほかない。
芦多は自分の部屋に早々に引っ込んだ。