この空の彼方
警告
***
「芦多様!」
敦賀が血相を変えて叫んだ。
ハッとして、前を向く。
芦多は間一髪のところで投石から逃れた。
それは芦多のすぐ脇に落下する。
「芦多様、しっかりしてください!」
苛立ちの混じった声で、敦賀は芦多を叱咤する。
「悪い。」
芦多は端的に詫びて体勢を立て直した。
しかし、その謝罪も敦賀に届いていたのかは定かではなかった。
なぜなら、周りの喧騒が物凄い。
男達の叫び声が止むことなく響き渡っている。
その中で芦多の軍勢は少数だったが、勇ましく戦っていた。
蛇儒が姿を現してからほぼ三日近く経つが、今は何の接触もない。
時折、嫌な寒気がして芦多は辺りに視線を走らせたが、蛇儒の姿はないのだ。
警戒しながらも、戦っている現状だった。
「芦多様、我が軍が押してますよ!!」
今までにないくらい、高揚した敦賀の声が、芦多を振り向かせた。
見ると、確かに敵が撤退を始めているのが見えた。
男達は逃すかとばかりに、敵に斬りかかっていた。
芦多も胸に何か熱いものがこみ上げてくるのを感じた。
初めての優勢に、今までの疲労がすべて吹き飛ぶ。
それは敦賀も同じだったようで、既に彼は幾人かの部下を引き連れて走っていってしまった。
芦多も駆け足にそれを追う。