椿と柊
動こうとしない足を軽く叩いて、私は無理やり前に進んだ。
恐る恐る、建物の影から中庭の奥を覗く。
「……汐留………汐留っっ!!」
倒れている汐留の姿を確認した瞬間、私は躊躇わずに走り出していた。
「……血が……」
汐留が落ちた場所は芝生の上ではなく、ちょうど硬めの土がむき出しになった場所だった。
私が想像していたような悲惨な状態では無かったけれど…頭部からは大量の血が流れ出ていて、左脚の膝から下が在らぬ方向へと向いていた。
…ガチガチガチガチ…
小刻みに震えだす体のせいで、歯がガチガチと鳴り出す。
「……あ…」
汐留の目が、見開いている。