椿と柊
優しくて長身で『草食系』という言葉がよく似合う男…庄司楓先生…。
そこそこ顔もよくて、何気に女子生徒に人気がある。
「…し…汐留…さん…」
「…さ…桜…!……本当に…」
ササと庄司先生は、血を流して倒れている汐留の姿を見つめ、呆然と立ち尽くす…。
「……い…急いで…救急車を…」
庄司先生はササにそう告げると、白衣のポケットからパッと薄手のビニール手袋を取り出した。
「…あ…ああ!…」
ササは2・3回頷いて、ダッと走り出す。
「…よ…呼んでないの?!…何やってんのよっ!」
「……悪いっ!」
私の怒声に振り返り、ササは走りながら謝った。
「……香山さん…佐々岡先生を責めないでください。救急車を呼ぼうとしたのを、『確認してこい』と他の先生に止められたんです…」