椿と柊
予想だにしなかった柊の言葉に、私は思わず紅茶をこぼしてしまった。
「…あぁ……ティッシュ…ティッシュ……」
「……そう…。…で、その格好は…仕事をしているということかい?」
私のドジに祖母が注意しないなんて…めずらしい…。
祖母はただ柊を食い入るように見つめ、質問を続けた。
「…あぁ…うん…まぁ…。…知り合いに世話になってんのさ…」
柊は寂しげにそう答えると、ゆっくりと祖母から目を逸らす。
スーツに…金髪…。
こんな格好での『仕事』なんて、あまり善い職種とは思えない…。
「何しに来たの?」
かすかにため息が混じった祖母の言葉。
そこにはどこにも『会えて嬉しい』なんて感情は無かった。