椿と柊
「つーちゃ…!」
「…ひっ…う………うぅ…」
私からこんなに涙が出るんだ…。
そう驚いたのは、私自身だけじゃなかったと思う。
まだ家族四人で暮らしていた頃、よく泣いていたのは柊の方だった。
…というか、私は泣いたことが無かった。
祖父が亡くなったときも、そんなに悲しくなかったし…。
中学時代、不良をやっていた頃…どんなに辛くても泣いたことは無いし…。
記憶にあるのは、やっぱり柊と別れたあの日。
…あの日以外で…涙を流した覚えはない…。
「…椿…」