black & red
‡encounter‡
†灰色の空†
イギリス・ロンドン。
年間を通して厚い雲に覆われる街。
今日も空を仰ぎ見れば、灰色の雲が画面一杯に広がり、今にも雨が降りだしそうだった。
「パパ、ママ。もう行くわね。」
灰色の空に今にも消え入りそうな声が響く。
今では完全に更地になってしまった場所を目の前に私、エリザベス・ブランドは立っていた。
(なんだ...もう涙も出ないんだ。)
驚く程、落ち着いた声が出て思わず苦笑する。
涙も何時しか枯れ果て、駆け巡るのは思い出ばかり。
小さいけど暖かい家。
ママと二人で育ててた花がとても綺麗で。パパは喜ぶ私達を何時も優しく見守ってくれた。
そんな愛しい二人も暖かい場所も…もう二度と触れられない。
(早く…前に進まなくちゃ。)
エリザは胸に込み上げる思いを堪えて、目の前に広がる更地から瞳を反らす。
そしてゆっくり振り向いて、微笑んだ。