black & red
(こいつか~!!)
ブーツの上にフワッと舞い落ちた紙を、睨み付けながらグシャっと拾い上げる。
茶色く色褪せた古い紙。
何やら文字が書いてあるけど途切れ途切れでかなり読みずらい。
「んん~なになに…《募集中ですー…》」
それでもエリザは目を細め、黒く掠れた文字を読んでいく。
「《三食付き、報酬は応相談。明るく、元気なー…》」
そして最後の一文を読み取って、エリザは目を見開いた。
(うそ。こんな偶然って…。)
「《住み込み家政婦募集中》…?」
瞳が熱を帯びて輝きだし、思わず笑みが漏れる。
「神様は私を見捨ててなかった…!!」
(なにこれ!スゴいラッキーじゃないっ!
住み込みだったら泊まる所に困らない!さらにはご飯も食べられて、お金まで貰えるなんて…)
「最高!!」
忌々しく感じた紙も、今ではキラキラ輝く宝石の様に感じる。
紙を握りしめバッと立ち上がる。
降って湧いた幸運とはまさにこの事だ。
前を真っ直ぐ見る瞳に不安や焦り、さらには怒りすらなく、ただキラキラと瞳を輝かすエリザ。
(神様ありがとう…!!)
手を胸に当て空を見上げるその心は、すでに決まっていた。
「絶対なるわよ、住み込み家政婦!!」
絶対なってやるんだから!と拳を握り、再びムンっと気合いを入れ直す。
そしてエリザはトランクを手に、足取りも軽く歩き出す。
漆黒の闇が訪れようとする空に、輝かしい光の道を見つけて。