あなたの隣
「お前いい加減観念しとけっ!」
「おじさんこそっ白旗あげてもいいんだからねっ!」
仕舞には立ち上がってやり始めた私たちの水かけっこは未だに続いている。
ばしゃばしゃとかけたりかけられたり、気持ち~なぁ。
こども扱いばっかりするおじさんを負かそうと勢いよく水をすくいあげたそのときだった。
「詩桜っ?!」
「ぁっ…」
足を滑らせバランスを崩したあたし。
ぎゅっと目をつむってしまったあたしは一瞬何が起きたのかわからなかった。
ばっしゃん!!!!
水を叩きつける様な大きな音とともにあたしは後ろへ倒れこんだみたいで。
思ったほどの衝撃がないことを不思議に思ってそっと目を開いた。
間近にはおじさん、ふと斜め後ろに目を移すと、ごつごつとした岩。
どうやら、おじさんが方向をそらして支えてくれたらしい。
「お、おじさん…?あの、あの…ありが、と。死ぬかと思ったよ、ははは」
「……笑ってんな!こっちのが驚いたっつーの。馬鹿詩桜!」
少し本気で怒られて、ホントちょっとだけ怖かったけど、その優しさが嬉しいあたしはもう末期だよね。
まだ怒っているのかと思ってちらっと様子をうかがうと、おじさんがみるみるうちに顔を赤くしていった。
なになに?!何事?!
………よくよく考えてみれば、お、押し倒されてるように見えるのかな。
この状況…。
余計なことに思考がまわったせいであたしの顔にも熱が集まる。
おじさんはすっとその場を退くと手を差し出しあたしを岸へ引き上げた。
ぷちっ…ぷちっ…