万象のいた森
 
なだらかな坂の上に建つノーベルの家は想像したよりも、はるかに立派だった。

ユキは引き戸を叩いても声を掛けても返事のない玄関の前で、途方に暮れていた。

後ろ髪を引かれる思いで、引き戸に手を掛けると、ガラガラっと簡単に開いた。

胸までありそうな高い床が目に飛び込んできた。
色あせたタタミの間が広がっていた。

「こんにちは、・・。ごめんください・・」

ユキは言い訳するように声を張り上げた。

うす暗い奥の部屋。
フスマのすき間からのぞいた布団が、すべるように動くのが見えた。
 




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