万象のいた森
 
首にタオルを巻き、うすいピンクのスウェット姿で現れた女性は明らかに具合が悪そうだった。

「すいません。寝てらしたんじゃないですか」
「いえいえ、もう起きようと思ってたんですよ。すっかり風邪を引いちゃってねぇ」

そう言いながら、ノーベルの母親らしき人は甲高く咳き込んだ。

「ショウくんは?」

途端にその人の顔色はくもり、歩みを止めた。
そして、ユキから3mは離れたところで膝をついた。

「ショウですか?あの子がなにか悪さでもしました?」
「いえ、そんなんじゃないんです。これを渡そうと思って」

ユキは手に持った袋を見せた。

「ホットケーキです」

 




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