万象のいた森
「はい、ホットケーキ」
ノーベルは袋を受け取ると中をのぞき込んだ。
「お母さん、ホントに病気だったんだね」
『ホントに』を強調したのがカンに障ったのか、ノーベルはユキを睨みつけた。
ユキだって負けていない。
「ちゃんと弟にも分けてあげてね」
二人は睨みあった格好になった。
ノーベルは意を決したように自転車にまたがると、振り向き、荷台をたたいた。
「乗って」
ユキは荷台を見て、ノーベルを見た。
「二人乗りはダメなんだよ」
「いいから、乗って」