万象のいた森
 
そこはノーベルのじいちゃんが造ったヒノキの森。

規則正しく並んだヒノキはじいちゃんの生きた証。
不要な枝を落として真っ直ぐに伸びた幹は父ちゃんの生きた証。

大きく伸ばした枝々は光を遮断して、その森を暗くする。


ノーベルがどうしてヒノキの森を思い出したのか、わからない。

長いこと来ていなかったヒノキの森に、ノーベルが導かれるようにやって来たのは、一週間前のことだった。


そして今、ノーベルに手を引かれ、ユキもそのヒノキの森に足を踏み入れた。


谷底から上ってくる湿った空気が肌に気持ちいい。

ユキは大きく深呼吸した。

 


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