万象のいた森
ノーベルは黒糖飴の袋に入れた水を前屈みでつかみ、溢れないようにすり足で登ってきた。
「ねえちゃん、気がついた?」
「水を汲んできてくれたんだ」
ノーベルはニカッと笑い、その水を差しだす。
「あ、ありがとう」
ユキはハンカチを取り出し、その水に浸そうとすると、ノーベルは引っ込めた。
「ちがう。これ、飲・む・の」
「えっ、・・・大丈夫なの?」
男の子は吹き出し、ユキをあざけるように笑う。
「わき水なんだ。すっごいおいしいよ」
ノーベルは袋の耳を持つようにして袋の口に唇をつけ、そのまま袋を上げていき、ゴクリと水を飲んだ。
そして、ユキに差し出す。
ユキは仕方なく袋を受け取ると、中を覗きこんだ。
浮遊物は何もなさそう。
男の子は転げ回って笑っている。
「ノーベル、この子をなんとかしてくんない」