万象のいた森
ユキはノーベルとは反対側に唇をつけると袋を上げた。勢い余って、口元から水が溢れる。
それでもほんのわずかばかり、なめるように飲んだ。
「おいしい」
更にゴクリと飲んだ。
「うわっ、ホントおいしい」
転げ回っていた男の子が物欲しそうな顔でユキを見上げている。
ユキはもったいぶって仰々しく袋を男の子に渡した。
男の子は受け取ると一気に水を飲み干した。
今度は憎たらしくケタケタと笑いだした。
そして、そのまま袋を持ったまま谷底めざして駆けていった。