万象のいた森
「まあ、良かった、良かった」
「なんでぇ、全然よくないでしょ」
「あぁ、すまん、すまん。ノーベル賞が元気になって良かったって話だ」
「ノーベル、元気なかったの?」
「去年、ノーベル賞の父ちゃんが亡くなってな。それから、別人みたいにおとなしくなってしもうた。まぁ、仕方ないけどな」
「ノーベルのお父さん、亡くなってたんだ」
「あぁ、まだ一年も経っとらん」
「病気だったの?」
「ガンだったそうだ。お姉ちゃんの花嫁姿を目に焼き付けて逝ってしまいよった」
「お姉さんが結婚して、すぐに亡くなったんだ」
「というより、ノーベル賞の父ちゃんが死ぬ前に花嫁姿を見たいって言うて、結婚を急がせたらしい」
「ノーベルにすれば、家族が二人、急にいなくなったんだね」
「・・・」
「おじいちゃん、やっぱりノーベルの家、教えて。ホットケーキ、持ってってくる」