戦乙女と100の物語

その頃ー…










暗い洞窟に、二人の男の声が響いていた。




『頭、見てください!』


一人の山賊らしき男が叫ぶ。



洞窟の奥から、フードを被った、背の高い男が現れた。





『頭、やりましたぜ!
コイツは人間、しかもあっちの世界のやつです。きっと、さっき撃ったヤツにちげぇねぇです』



『…ならば、この女はあの選ばれし…?』



フードの男は、縄で縛られた女の前でしゃがんだ。



『顔を見せろ、女』



しかし、女はうつ向いたままで
じっと地面を見つめていた。



『フン…』




フードの男は、女の顎をグイッとあげて顔を見た。





『ほう…なかなか美しいではないか』



女の顔は、血の気は少し失せてはいるが、瞳は強く光っていた。



『その汚い手で、気安く触んないでちょうだい』



女は、ぺっと唾をはいた。



『コイツーっ!』



『よい』



フードの男はもう一人の男を手で制した。




『女、強気でいられるのも今だけだ…。カンクの撃った弾の毒で、もうフラフラのはずだ』



『ーっ』



女は言い返す言葉が思いつかなかった。





視界がぼやけるー…





『カンク、この女を見張っていろ。今日の獲物は上物だ…』




男は不敵な笑みを浮かべていた





< 15 / 69 >

この作品をシェア

pagetop