戦乙女と100の物語
『誰か来る』
うん、とギルガードは頷き、あたしの手を握った。
『何をしている?』
あたしは下を向いていて顔は見えないが、フードの男の声ではなかった。
『いや、コイツがトイレに行きたいって言うんで…』
きっと、今はハールアの全身を舐めるように見ているのだろう。
それとも、怪しまれたのかもしれない。
『ふむ。では…』
『じゃ、行きますよ』
ギルガードが手を引っ張った。
『おい、まてっ』
しかし、ギルガードは早足でその場を後にした。
『ちょっと…。ねぇ聞いてるの?ギルガードっ』
相変わらず、ハールアの手を握ったまま無言で進む。
『人の話は聞きなさいよ!』
ハールアは手を振り払った。
『何なの?
あんたが早く行こうとするから、怪しまれたじゃない』
『…いや、もう多分バレていると思う』
いきなりの言葉に、ハールアは驚いた。
『どういうこと…?』
『ビーテ族の勘だ。
早くここから出るぞ』
ギルガードはそのまま早足で進んだ。
ービーテ族のギルガード…?
どこかで聞いたことのあるような…
『行くぞ』
呼ばれると、ハールアは急いで駆け寄った。