PURE
「モモ、仕事よ。」
顔を上げると、鏡に写っていたのはマネージャーのミナミさんだった。
ミナミさんは、モデル顔負けのスタイルと漆黒の長い髪を持ち、赤い縁の眼鏡がよく似合う女性だ。
あたしは、すっかりとメイクされた顔を見つめると、ピンク色のボレロを羽織り、立ち上がった。
「あんな格好しなければ、こんなにも美しいのに。」
あたしはその言葉を無視し、楽屋を出た。
ポケットからミラー付きの時計を取り出す。
ミラーに貼られているのは、ついこの前、雅と撮ったプリクラ。
雅は人を人として見てくれる―。
あたしをあたしとして見てくれる―。
傍にいるだけで、“たいせつなこと”が伝わってくるんだ。
あたしもそんな風に歌えればいいな。