千里ヶ崎の魔女と配信される化け物
千里ヶ崎さんの想像は、自在に変速する。

「ならば仮に、社会がその化け物を認識するとしよう。だけれどね、被害者はあとを経たないのだよ」

「どうして?」

「どうしても。危険だとわかっている行為、場所、ジンクスに踏み込んでしまうのが、人の性だからとでも言っておきましょうか」

「そんな諦観はイヤです」

「わがままだね君は。わかりやすく言うなら、ケータイ依存症の人間。多いでしょう。そんな人間は、画面を食い入るように見つめ、逆に化け物から食いつかれるというわけだね」

「待ってください。ケータイ依存症の人が持つケータイなら、だいぶ使い込んでますよね。一年か、二年。ってことは、その長い期間、化け物は擬態していたんですか?」

「たしかに。生物学に考えても、そんなに長い間なんの接種もなしに擬態するのは異常だね」

その前に、ケータイ型っていう形態の時点で異常です。

テンションがあがったのか、また千里ヶ崎さんは起き上がる。ただし上半身だけ。

「ならこうしよう! その化け物は、いずこからか配信されてくるものなのだよ!」

「どこから配信されてくるんですか!」

「無論、黒幕の何者かか、例のパンドラの箱だね!!」
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