千里ヶ崎の魔女と配信される化け物
ここは、僕がご機嫌を取らないといけないだろう。
「まあまあ、千里ヶ崎さん、落ち着いて。それで? そのケータイ化け物の話はどうなるんですか?」
「……知らないよ」
「え?」
「正確には、わからなくなったのだよ。香蘭のガサガサによって、想像旅行のフライトは中止になってしまったの。ああ残念……」
「残念って……」
あれだけ想像しておいて、まだ飛び立ってもなかったんですか。
入り口の左の、わずかなスペースに、柱時計がかかっている。大きな振り子を音もなく左右させているそれが、重々しくボーンと六回鳴った。つまり六時。
ここに来て読書をする時は、十時を回ることも珍しくない。僕は子供じゃないし、一人暮らしだから、わりと自由なのだ。
すっかり拗ねた千里ヶ崎さんが、首だけもたげて柱時計を見やる。長い髪が、また顔に何条かかかっていた。
「もうこんな時間なのだね」
「そうですね」
「……皆川くん」
「はい」
「今日は泊まっていくといい。香蘭に、君の夕食も用意させるからね」
「え、でも……」
「まあまあ、千里ヶ崎さん、落ち着いて。それで? そのケータイ化け物の話はどうなるんですか?」
「……知らないよ」
「え?」
「正確には、わからなくなったのだよ。香蘭のガサガサによって、想像旅行のフライトは中止になってしまったの。ああ残念……」
「残念って……」
あれだけ想像しておいて、まだ飛び立ってもなかったんですか。
入り口の左の、わずかなスペースに、柱時計がかかっている。大きな振り子を音もなく左右させているそれが、重々しくボーンと六回鳴った。つまり六時。
ここに来て読書をする時は、十時を回ることも珍しくない。僕は子供じゃないし、一人暮らしだから、わりと自由なのだ。
すっかり拗ねた千里ヶ崎さんが、首だけもたげて柱時計を見やる。長い髪が、また顔に何条かかかっていた。
「もうこんな時間なのだね」
「そうですね」
「……皆川くん」
「はい」
「今日は泊まっていくといい。香蘭に、君の夕食も用意させるからね」
「え、でも……」