千里ヶ崎の魔女と配信される化け物
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千里ヶ崎ミシェルさん所有の、「千里ヶ崎屋敷」への道のりの話だ。
彼女の屋敷は、街の高台にある。緩やかな山をぐるぐる迂回しながら登った、頂上だ。
特別な足のない僕は、屋敷までは歩いていかなければならない。
坂道だけで、徒歩四十五分……ほぼ毎日千里ヶ崎さんの家を訪れているから、これはかなりの運動だ。
もっとも、インドア派な僕にはちょうどいいのかもしれない。
大きな弧を描き続ける坂道は、ところどころに街灯が立っているばかりだ。
道が暗いから、丸く真っ白い光が、間の空きすぎた飛び石のように点在している。
その白い円の中に、なにかがあった。
……ひと。――そう人が転がっている。
スカートとジャケット、茶色い髪の女性が、仰向けに。
そばにハンドバッグが転がっている。
何事だろうと近づいたものの、顔は、見られない。
なぜなら、顔面へ噛みつくようにして、黒革の手帳が被さっていたから……。
それが、千里ヶ崎さんの屋敷へ行く前に見た、奇怪だった。
千里ヶ崎ミシェルさん所有の、「千里ヶ崎屋敷」への道のりの話だ。
彼女の屋敷は、街の高台にある。緩やかな山をぐるぐる迂回しながら登った、頂上だ。
特別な足のない僕は、屋敷までは歩いていかなければならない。
坂道だけで、徒歩四十五分……ほぼ毎日千里ヶ崎さんの家を訪れているから、これはかなりの運動だ。
もっとも、インドア派な僕にはちょうどいいのかもしれない。
大きな弧を描き続ける坂道は、ところどころに街灯が立っているばかりだ。
道が暗いから、丸く真っ白い光が、間の空きすぎた飛び石のように点在している。
その白い円の中に、なにかがあった。
……ひと。――そう人が転がっている。
スカートとジャケット、茶色い髪の女性が、仰向けに。
そばにハンドバッグが転がっている。
何事だろうと近づいたものの、顔は、見られない。
なぜなら、顔面へ噛みつくようにして、黒革の手帳が被さっていたから……。
それが、千里ヶ崎さんの屋敷へ行く前に見た、奇怪だった。