千里ヶ崎の魔女と配信される化け物
千里ヶ崎さんは、手帳を開く気配がない。
「あの、それ、『読む』ものじゃないってどういう、」
「おさらいすると、標的がいるということは、化け物には目的があるわけだよね。もっとも、その目的は術者の目的だろうけどもね」
「……」
遮られた。教えてくれるつもりは、ないらしい。
ソファーの肘掛けからはみ出した足が、ぱたぱたと揺れている。
彼女の余裕が、不敵さが、僕にはなんだか、もどかしかった。
「千里ヶ崎さん……」
「なにかな」
「なんで読まないんですか」
「……」
「なんで今日は本を、読まないんですか」
「…………」
千里ヶ崎さんは、
ふふ――と。
笑った。
「皆川くん、化け物に襲われないためには、どうすればいいと思う?」
「は?」
「化け物はケータイ――媒体から配信されてくる。なら、その媒体を使用しなければ化け物に襲われることはない。君子危うきに近寄らず。理だよ。つまり、そういうことかな」
「だから、本は読まないんですか」
「ああ」
そして、僕を見た。
「とてもじゃいけどね、私を襲おう襲おうと待ち構えている化け物の前で、そんなことはしないよ」
「あの、それ、『読む』ものじゃないってどういう、」
「おさらいすると、標的がいるということは、化け物には目的があるわけだよね。もっとも、その目的は術者の目的だろうけどもね」
「……」
遮られた。教えてくれるつもりは、ないらしい。
ソファーの肘掛けからはみ出した足が、ぱたぱたと揺れている。
彼女の余裕が、不敵さが、僕にはなんだか、もどかしかった。
「千里ヶ崎さん……」
「なにかな」
「なんで読まないんですか」
「……」
「なんで今日は本を、読まないんですか」
「…………」
千里ヶ崎さんは、
ふふ――と。
笑った。
「皆川くん、化け物に襲われないためには、どうすればいいと思う?」
「は?」
「化け物はケータイ――媒体から配信されてくる。なら、その媒体を使用しなければ化け物に襲われることはない。君子危うきに近寄らず。理だよ。つまり、そういうことかな」
「だから、本は読まないんですか」
「ああ」
そして、僕を見た。
「とてもじゃいけどね、私を襲おう襲おうと待ち構えている化け物の前で、そんなことはしないよ」