千里ヶ崎の魔女と配信される化け物
†
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「いったいなんだったんですか」
と、僕は本を片手に訊ねた。
一階にある、書庫でだ。日が暮れた今や、天窓からは月光が降り注いでいる。
「ケータイの危険性だったんだよ、最初はね」
と、千里ヶ崎さんは答えた。
例の化け物を吸い込んだ手帳を片手で持ち、長ソファーに横たわっている。長い黒髪が、腕や首、胸、股なんかに流れていた。
「は? ケータイ?」
「つまり、人間が手にし、長時間使うものほど、恐怖の対象となった時の危険は計り知れない、という話だったの」
「はあ……」
ここへ来る前、坂道に女の人が倒れていたのを話した。
けれど彼女はとてもあっさりと、まるでそういうことがどこかで起こっていると知っていたように、「それは『途中経過』だったのだよ」と言っただけだった。
わけがわからなかった。
ボーン。
ボーン。
ボーン。
ボーン。
ボーン。
ボーン。
と、柱時計が鳴る。
あれ? と首を傾げた。
「千里ヶ崎さん、あの時計、壊れてませんか?」
「うん?」
「もう十時になるっていうのに、鐘が六回しか鳴りませんでしたよ」
「ああ。それはね、壊れてくれたの。君じゃない君が来た時に、ね」
「いったいなんだったんですか」
と、僕は本を片手に訊ねた。
一階にある、書庫でだ。日が暮れた今や、天窓からは月光が降り注いでいる。
「ケータイの危険性だったんだよ、最初はね」
と、千里ヶ崎さんは答えた。
例の化け物を吸い込んだ手帳を片手で持ち、長ソファーに横たわっている。長い黒髪が、腕や首、胸、股なんかに流れていた。
「は? ケータイ?」
「つまり、人間が手にし、長時間使うものほど、恐怖の対象となった時の危険は計り知れない、という話だったの」
「はあ……」
ここへ来る前、坂道に女の人が倒れていたのを話した。
けれど彼女はとてもあっさりと、まるでそういうことがどこかで起こっていると知っていたように、「それは『途中経過』だったのだよ」と言っただけだった。
わけがわからなかった。
ボーン。
ボーン。
ボーン。
ボーン。
ボーン。
ボーン。
と、柱時計が鳴る。
あれ? と首を傾げた。
「千里ヶ崎さん、あの時計、壊れてませんか?」
「うん?」
「もう十時になるっていうのに、鐘が六回しか鳴りませんでしたよ」
「ああ。それはね、壊れてくれたの。君じゃない君が来た時に、ね」