千里ヶ崎の魔女と配信される化け物
ケータイ小説はほとんどが一人称展開だ。だから、聞いていても飽きなかったんだろう。

僕の中に、香蘭さんがケータイ片手に音読する様が浮かぶ。
、、
あのしとやかな香蘭さんが、千里ヶ崎さんを満足させる音読をした……それもやっぱり、想像しづらかった。

ちなみにどうして僕がケータイ小説の云々を知っているかと言えば、僕もそれなりに読書家だからだ。

千里ヶ崎さんの館には、ちょくちょく読書をしに通っている。自然、香蘭さんとも知り合いというわけだ。

千里ヶ崎さんが、一本指を立てる。

「それで、だ。これは想像した話なんだけれどね――もし、ケータイが化け物であったら、どうだろうか、と」

「……、は……?」

「わからないかな? ケータイ小説を読んでいる間、私も香蘭もケータイに釘付けだったさ。それで、もし万が一、ケータイが人を襲うような化け物であったら、どうだろう……と想像したんだ」

「は、はあ……」

そろそろわかってきてもらえたかと思うけど、千里ヶ崎さんはちょっと……いやだいぶ、変わっている。

なにせ、自分のことを魔法使いと言ったこともあるのだから。

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