千里ヶ崎の魔女と配信される化け物
「そこで、私はふと想像したわけだが、――もしケータイが化け物だった場合、それはそれは恐ろしいなと」

「はあ……」

「おや、リアクションが薄いったら。……いいかな、これは一大事なのだよ。ケータイ小説を読むがごとく、ケータイに釘付けになっていたら突然、これが化け物となった。最初に手がガブリと食われるのはもちろん、距離で言えば、続いて顔面に飛びかかられるじゃないかっ!」

「は、はあ……」

なんだろう、そのB級ホラーの化け物みたいなのは。

千里ヶ崎さんひとりに喋らせると、どこまで想像するか計り知れない。

適度に水を指すのが、この春からここに通う僕の役目だ。

「あのですね、まず、そんなケータイだったらだれも買わないんじゃありませんか?」

「それはわからないじゃない。店頭に並んでいるうちは、普通のケータイに擬態しているのかもしれない」

「擬態って……なんのために」

「人間の隙を突くために決まっているじゃないの」

「どうして人間を襲うんですか?」

と訊いたら、途端、千里ヶ崎さんは「はっ」と鼻で僕を笑った。

「皆川くん、それはナンセンスな質問ね。答えなんて決まっているじゃないか」
< 6 / 34 >

この作品をシェア

pagetop