千里ヶ崎の魔女と配信される化け物
千里ヶ崎さんは、ふぅと息を吐いた。長い髪が口もとにかかっていたらしい。ひゆんと揺れ飛ばされる髪が見えた。

「想像してみるといいね。飛び出した化け物によって、第一の被害者となったか。あるいは今、化け物達を封印するために奮闘しているかもわからない」

奮闘? 無知で無邪気で穢れのない子供が? 化け物相手に?

「いったいどうやって」

「だからね。パンドラの箱は、慌てて閉じたら希望が残っていたっていうじゃない。同じように、化け物と戦う力があったのだよ」

「それで、戦ってるんですか? 子供が?」

「希望が残っていたならね。そうなると、なおさらおもしろい。ケータイ型の化け物を相手に戦う少年少女。ファンタジーの始まりじゃないの」

「いやいや、子供に戦わせるって、どんな不条理な世界ですか。だいたい、そんな化け物が本当に出没したら、社会のほうが先に対応します。目に見えないウイルスでさえも、社会的対策が取られる時代なんですよ?」

「うん。今日はずいぶん反論するじゃないの」

「普段だって反論してます。千里ヶ崎さんが聞いてくれないだけで」

「おや。そうだったかな?」

と、千里ヶ崎さんは意地悪にとぼけた。
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