時の雫 白銀の瞳
泣き崩れ、その場から立てなくなってしまう。


この場所のせいもあるだろうか、哀しみや後悔の念が、身体中を支配していく。

涙が後から後から溢れて、頬を伝い、地面を濡らした。



哀しみに、全てが染まりそうな時だった。
ふいに、体に微々な揺れを感じて周りを見渡す。

段々と大きくなる揺れに、息をのみ、緊張感で体を硬くした。

『地震?』

…にしては、揺れ自体が近付いてきているような……


大きな揺れは、私のほんの数メートル地点で止まった。

周囲に立ち込める鼻をつく悪臭と、聞こえる荒い息の音。


『い、いやぁぁぁ!!!!!』

見たことのない生物が、今にも飛び掛からん勢いで、私を欲深く見下ろしていた。

短い脚に長く延び、濡れた体毛…耳は小さく、それなのに目と口は異様なまでに大きい…

『逃げなきゃ…』

逃げないと確実に食べられちゃう!

命の危険を感じ、必死に立とうと努力してるのに、私の足は言うことを聞いてはくれない。

やだっ!!

『こんなんで、こんなとこで…わけわかんないまんま死にたくないよぉぉ!』


声を荒げ、威嚇のつもりで、その獣を睨みつけたものの…怯むはずもなく、不気味な脚が一歩前に出された。


ダメだ…


殺されるっ…!!!
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