時の雫 白銀の瞳
死を覚悟し、私はぎゅっと目を閉じた。

低い唸り声と、大きな足音が近くなる―――


『ギィィィァァァ!!』

殺されるっ―――




あ、あれ?

痛くない…


一層大きく物凄い唸り声を上げる獣。

悲痛な鳴き声に、固くつむっていた目を開ける。


先程の獣の首元に喰らいつく、ひと回り小さな黒い影。

抵抗も虚しく、首をガクッと垂れ、息絶えたのを確認すると、首から鋭い牙を外した黒い影が、ゆっくりと私に目線を合わす。


艶やかな黒い長毛。

ビー玉のように輝く瞳。


『ジャ、ジャスミン…!!!???』


そこにいたのは、確かに愛猫のジャスミンだった。

ただ、じゅ、10倍?いやそれ以上に巨大化しているけど…


『…ジャスミン?』

恐る恐る呼びかけ、手を差し出してみる。


『ナァン…』

いつもの可愛らしい声で鳴いたかと思うと、その体はみるみる小さくさっていく。


私の足に絡まりついて甘える姿は、変わりなく、私のジャスミンだ…

ほっとして、私はまたボロボロと泣いてしまう。
< 13 / 56 >

この作品をシェア

pagetop