時の雫 白銀の瞳

これと、これも…。

あと、下着と薬とお菓子と…。


『美琴、一体どれだけ詰め込むんだ?』

長い間黙って見ていたジャスミンが、呆れた様子で顔をしかめる。


『だって!どんなとこかもわかんないし、困るでしょ?!』

私はと言うと、旅行鞄にありったけの物を詰め込んで、一人でアタフタしていた。

あっちに行くとなったからには、必要な物ぜーんぶ持って行かないと。

『あちらにも物はある。必要最低限の物だけ持っていけば…。』


ジャスミンの静止を聞かず、あれもこれもと手に取りながら、もう必要な物がないかと考えた。

冗談じゃない。
わけわかんない場所だし、こっちの世界みたいに先進国?じゃなさそうだし、万が一にも怪我なんかしたら…。


『美琴、もうそのへんにしてくれ。私と共に居れば、戻ってくる事も可能だ。だから…。』

若干イライラした口調で、説得に走ったジャスミンを、忙しく動かしていた手を止めて睨みつける。


『前に言ったよね?どちらかを捨てる事になるって。それがいつくるかわかんないじゃん…。』

そこまで言って、何故か涙が溢れて声が震えた。

どうなるかはわからないけど、不安で不安で仕方なくて…。


『美琴…。』

ジャスミンが私の涙を拭うように、頬に優しく擦り寄ってくる。


この優しさも、王様の命令だから…?

喉まで出かけていた言葉を、ぐっと堪えた。

ジャスミンに八つ当たりしたって、何にもならないって、わかっていたから。
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