時の雫 白銀の瞳
不思議な感じだ。

ジャスミンが歩くと、回りの人達が皆道を開ける。

綺麗な建物が並ぶ街には、多種多様な人々がいた。

勿論、私と同じ人型もいたが、半獣と呼んでいいのだろうか…翼が生えていたり、耳が倍以上大きくて尖っていたり、中には下半身だけ鶏のような者もいた。

その全てがジャスミンが通ると道を開け、頭を下げる。


『ジャスミンって、偉い人なの?』

ジャスミンの温かさに身を委ねながら、率直に聞いてみる。

『……。私は王家に仕える聖獣。国を治める王に次ぐ位を与えていただいている。』


と言いますと…??

私はそんな位の高い人?の背中に乗ってるって事?!

『ジャスミン、いいよ!下ろして!』

突然、自分の置かれている状況などんなものかに気付いて、叫んでしまった。

沿道の人々が、私の声に驚き顔を上げ始める。

『美琴、頼むから大人しくしてくれ。そして馴れろ。』


馴れろって言われても…。

普段人から頭を下げられたりする事なんてないし…と言うか一度もないのに、急に慣れるわけないよ。

心の中ではそう思っても、歩みを止める事ないジャスミンに、必死にしがみついてるしかない。


『もう直ぐだ。』


先程、小高い丘の上から見えていた天まで伸びている塔が目の前まで迫っていた。

近くで見る迫力は相当なものがある。

塔を囲むように見えた木々は、樹齢何年かわからない程、年月を幾つも重ねてきたのだろう、素晴らしい存在感だった。

『着いたぞ。我が国の城に。』

ジャスミンが軽く首をくいっと上げると、木々達は仄かに光り出す。

すると、それまで存在していなかった大きな門が現れ、ゆっくりと開き始めた。
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