時の雫 白銀の瞳
『さぁ、王のもとへ――。』

ジャスミン達と足並みを揃え、城の入口まで辿り着くと、見上げるような大きな扉がそびえていた。

どうやって開くのだろう、とても人の力では動かせそうにない。

大の大人が何人かかったって押す事も引く事もできないだろう。

それにしてもおかしい。

こんなに立派な城なのに、護りの兵どころか人一人いない。

『…ジャスミン、王様って一人で住んでいるの?』

私の言葉が意表をついたのか、真ん丸の目で驚きを表した後、呆れたように口を開いた。

『そんなわけないだろう。』

その口調に些かむっとしたのを見ていたジャッジが、慌ててフォローするように説明し始めた。

『王の回りを護る者には、私達聖獣の他に、神官や魔導志…剣志がいます。実体で王を護る者は極僅かで、この城を守っているのは彼らの魔法です。ですが、エルドラで魔法を使える者は王族から力を与えて貰った者のみです。城に人を見ないのは、そのせいですよ。』


魔法…。

本当にそんな世界があるんだ…。

納得したようなしないような。
ジャスミンに助けられた際、実際に目にはしたけど、まだ実感は沸いてこなかった。

悶々としている私を他所に、あれ程大きな扉が音も立てずににすぅと開いていく。

扉が完全に開ききると、中には一見教会のような開けた空間が広がった。

高い天井にはステンドグラスがはめ込まれ、その光りが沢山の模様を造り上げていた。

中央に伸びる螺旋階段は、何故か途中で途切れている。

あれじゃ、登れないじゃない。

眉を潜めて固まっている私を促すように、ジャスミンが尻尾で私を押して、階段を登るよう指示する。

『え?登るの???』

一体どこに…

もぅ、わけわかんないけどいいや…。ここまで着たら、この世界は今までの常識は通用しないって事がわかってきたし。

もうどうにでもなれと、私は階段を登り始めた。
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