時の雫 白銀の瞳
嫌だなぁ…。

心臓があおって、呼吸が早くなるのがわかる。

ジャスミンに言われた通り、王の部屋の前まで来たけど…。

何分たったんだろう。
私はいつまでもドアの前にいた。

いくら深呼吸しても落ち着かない。

…どぅしよう。ジャスミンには一人で行くように言われたけど…。
ここまで案内してくれた兵士を連れ戻そうか…。

……いや、無理だよね。

あっちへ行ったり、こっちへ行ったり…。部屋の前でウロウロしてしまう。

その時だった――。


『何かお困りですか?』

急に声をかけられて、びくっと体を震わせると、硬直してしまった。

だ、誰?てか、気配しなかったけど…。

『カミア王にお話しがあるなら、私がドアを開けましょう。』
綺麗な顔立ちで、優しく笑みを浮かべる人物に、思わず一瞬見とれてしまう。

『えっ!いや、いいです!自分で…』

そこまで言いかけて、はっと気付く。

この扉…、ノブもなければ引いたり押したりも出来ない構造だ。ましてや、自動ドアのように扉の下にレールがあるわけでもない。

『王の部屋に入れる者は限られています。結界をとかなければ、中には入れません。』

そぅなんだ……って!!そんな事、一言も誰からも聞いてない!

『どうしました?』

『いえ…。』

腹を据えなきゃ…。
なんだかもう、訳がわからない事ばかりで、どうでも良くなってきた。
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