時の雫 白銀の瞳
ステンドグラスに囲まれ、淡い光に包まれながら、その男はいた。

重い甲冑を身に纏っている事など感じさせない足取りで、その男は紅のマントを靡かせて悠々と歩く。

どこまでも続く朱い絨毯。

廊下に列ぶ男達が、深々と頭を下げる。

朱い絨毯の終わりには、吹き抜けの天まで届きそうな高い天井の部屋。

そこから差し込む光が、金に輝く王座を一層神々しく照らしていた。

男は、甲冑を脱ぎ捨てると、荒々しく音を立てて座り込む。


『カミア王、お体のご様子はいかがでしょうか?』

緊迫した雰囲気の中、側近だろうか、灰色のローブを被った一人が口を開いた。

『…俺が、いつ体の心配をしろと言った?』

冷たく一言だけ発すると、王と呼ばれる男は怒りをあらわに、ローブの男を睨みつける。

『申し訳ございません!。』

慌ててその場に平伏した男は、頭を深々と下げたまま王に次の言葉を投げかけた
―――瞬間

鈍い音と、飛び散る真っ赤な血。崩れ落ちるローブの男。

『カ、カミア王!!』

何十人といる側近達が、動揺を隠せず後ろへ下がる。

王の手に握られた大剣からは、真っ赤な血が滴り落ちている。

『俺が聞きたい事だけ言え。他の質問は受け付けない。』

そう言い放つと、一度立ち上がった腰を、王座へ下ろす。

目の前に転がった骸など、全く気にもせずに…。

『報告を続けろ。』


冷ややかな目は、空を見つめていた。
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