神様のきまぐれ
「そういや・・・
志央のコトも
しらなかったよな。」
「はい。」
ヒナコは始終ニコニコと
楽しそうに会話をしてる。
緊張が解けたみたいに。
俺は一人で、
気持ちを揺らしてる訳だ。
マヌケだな・・・と、
思った。
「どうだった?
ライブやってみて。
肩の荷、下りた風だな。」
成り行きで、
自分達と一緒に
音楽をやることになったコトを
彼女は、どう考えて
いたのだろう。
仕事にたいする姿勢は、
見て来たけれども。
「楽しくて・・・
気持ち良くて・・・
でも、毎回緊張の連続で。
今は、ホッとしてます。」
こんな素朴な娘を、
ステージにあげていたのか・・
と、しみじみ思う。
あそこまで、こなせてたのは、
ヒナコの天性の感性と、
持ち前の運だった様だ。
よく、失敗がおこらなかったと
いまさらながらに思う。
素朴・・・と、いえば。
素朴な疑問を思い出した。
最初にであった日のコト。
「なあ。ヒナコ、
最初に会った日さあ。
なんで、うちの事務所に
きてたの?」
「え・・・。」
ヒナコは躊躇してるのか、
思い出しているのか、
うつむいた。
「すいません。後を・・
つけたんです。」
俯いたまま、
彼女はいった。