神様のきまぐれ
玄関が開くと同時に、
弟の呼ぶ声がした。
「ああ。久しぶり。
何年ぶりだろね。タクト。」
笑みいった自分に、
ちょっと照れていて、
まだ、彼は、
子供なんだな、と、思った。
「それより、じーちゃん家、
戻れよ。」
弟が手首を引く。
「何よ?騒がしい。」
「姉ちゃんに客!・・・
会いたいと思うけど?」
タクトはいって。
「客?・・まいちゃん!?」
友達の笑顔が浮かんで
確認する。
「違う!早く来いって!」
タクトは、もう
駆け出していた。
「待ってよ!」
「姉ちゃんは、遅いの
直ってないなっ!
じーちゃんに、客が
(酒を)盛られんうちに、
俺戻るから!
早く来いよ!!」
私の叫びなんて、
完全に無視して、
弟は走りさってしまった。
遅くて
悪かったわねっ・・・。
ムッとしながら、
祖父の家までの
道をたどる。
家の前まで来ると、
客間のほうから、
賑やかな声がしていた。
「じーちゃん。ただいま。」
気付く様子がなくて、
縁側の方にまわる。
「じーちゃん?ただいま。
どーしたの?お客様?」
奥を覗くように首を傾げる。
一瞬、逆光で
目が慣れなくて、
瞼をとじた。