神様のきまぐれ
客間のほうでは、
和やかな話し声が
続いている。

ほんと、あの二人は
何しに、こんな田舎まで
きたんだろう?

「タクト。あの二人と、
どこで会ったの?」

「ん?定期便の船の中。

いやぁ、昨日の今日だからさ、
びっくりしたよ。」

・・・わたしのほうが
ビックリしたわよ。

「姉ちゃんも
ゆってくれたら
よかったのに。」

「私も、何も聞いてないもの。」

ホントに何しに来たんだろ?

その答えを、弟から
聞くこととなった。

「ああ。そうなん?
オフで時間できたから、
顔見に来たっていってた。
あと、何か話あるとかって。」

だったら、

連絡くらいしてきて欲しい。


心臓に悪いんだから・・・。


でも、

こんなに
ドキドキしてるのは、
私だけなんだろう。


そう思うと、
少し悲しくなる。

近くにいるのに、
やっぱり遠い。



「いやぁ。しかし、
有名人がうちにくるとは
思わなかったな。」

私の思いなんて、
まったく理解していないだろう
弟が、呑気にそんな台詞を
吐いているのを聞きながら、
ともすれば、
止まりがちになる、
包丁を持つ手を動かした。




 
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