神様のきまぐれ
夏布団と言えども、
押し入れから、
重ねられたそれらを
引っ張りだすのは、重労働だ。

背伸びをして、
布団の端を掴もうとする
自分の背後から、
人が重なる気配を感じた。

「どれ?」

背後から、
日向さんの声が
降ってくる。

意図的ではないだろうけど、
体温を感じる距離に、
心臓がリズムを
変えるのがわかる。

「あ・・。この上の・・・」 

「了解。場所代わって。」

「あ。はい。」


日向さんは、
縁側まで運んでくれたあと、
お酒の席にもどっていき、
私は、真っ赤な顔をしたまま、
人数分の布団を干した。


ひとしきりお酒を飲んだあと、
タクトが、客人の二人を
海へつれていき、
私は、後片付けをしながら、
夕飯のメニューに
頭をなやませている。


私が、洗い物をしている
流し台の近くのテーブルでは、
祖父は新聞を読んでいた。

「ヒナコ。」

祖父に唐突に呼ばれ、
振り返る。

「ヒナコの恋人は、
日向くんだね?」

いきなり直球を投げられ、
うろたえてしまう。

「なにそれ?
そんな話してたの?」

必死に平静を装いつつ、
ごまかす。

「見たらわかるの。
じーちゃんには。」


 
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