神様のきまぐれ
優しい人だ。
日向さんは。
私のことなんて、
気にしなくて、いいのに。
「私・・・
人生経験だと思って
頑張ります。」
こんな機会を欲しくても
得られない人だって
いるんだから、
大事にしなくちゃ。
そう思って決心したこと。
「前向きなんだな。」
私の言葉をきいて、
日向さんが、ちょっと
はにかんだ笑顔をみせた。
でも、直ぐに、
次、仕事みつかんなかったら
どうすんの?
そう言って私をからかう。
その時は、実家に帰って
考えると、お茶を濁した。
実際、気掛かりだけど・・・
やるって決めたもの。
うつむいたまま
不安を心の端へ
押しやった。
「じゃあ、私、ここから
電車で帰ります。
ありがとうございました。」
扉に手をかけた。
「ああ。22時か・・・。
大丈夫?帰れる?」
彼は時計に目をやって
いった。
切れ長な眼
こんな近くにいるなんて
不思議な気分。
「ヒナコ?」
いけない、みとれてた。
「はい。大丈夫です。」
あわてて御礼をいって
車を降りて見送った。
明日から事務所勤めだ。
電話番だっていってたけど。
・・・大丈夫かな・・・
多少、不安になる。
ダメ。
頑張るしかないんだ。
私は、気持ちを
切り替えた。