神様のきまぐれ
「日向さんが言ったのよ。」

一瞬それた気が、
ヒナコの言葉で
ひきもどされる。

「志央の声のスパイスだって。

きっと、最初にしかやらない
歌だからこそ、インパクトの
あるものを好むんだと思うの。

お客さんを、早く
現実から隔離して、
自分達の世界にひきこみたい。

それを・・・
カルディナ皆でやりたい。

バンドとして作り上げたいって
思ってると思うの。」


聞きたいねえ。

そこまでいう
出来栄えを。


「それが、
どう声に反映されてんのかが、
わかんねえよ。きかねえとさ。
だからデモ聞かせろって。

何だったら・・・」

「?」

言葉を切った俺を、
ヒナコは、みつめる。

警戒心ゼロだな。
こいつ・・。

俺の勝ちだな。

聞かせてもらうか。


「強制的に
発声させる事もできるけど?
部屋のムードもでてるし。
どーする?」


夕焼けがカーテンを通り越して
部屋をオレンジに染め上げる。



「どっちも、やだっ!」


ヒナコが、拗ねた表情で拒む。


「どっちか選んで。」









 
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